「砲撃魔法の使い方?」
なのははコーヒーを飲みながら、小さな来訪者に聞き返した。
「はいです!使い方といいますか…照準を合わせるコツなどを、教えてほしいのです!」
小さな来訪者――リインフォースⅡは、はきはきと答えた。
相思相愛 ~私は貴方のために、貴方は私のために~
「そっかぁ、ユニゾンしないと照準合わせるのも難しいもんね。特にはやてちゃんの場合だと」
なのはは、リインフォースⅡの相談内容を聞いて、そう言った。
「そうなんです!リインも、早くはやてちゃんのお役に立ちたくて……」
事は、リインフォースⅡ――通称リインがなのはに持ちかけた相談から始まる。
“祝福の風”の名を継いだはやてのユニゾンデバイスとして誕生したばかりのリインは、優しい主の役に立ちたいと思い、自ら勉学に励もうと早速行動を起こした。
ストレージデバイスやインテリジェントデバイスは勿論のこと、ユニゾンデバイスも、主の魔導をサポートすることを最大の役目としている。リインもまた然りであったのだ。
「はやてちゃんの魔力はとても膨大です。でも、射撃魔法や砲撃魔法は、照準合わせでの精度が求められるです」
「大きな魔力と精密作業は相反するものだからね。一人でコントロールするのは難しいと思うよ。シュベルトクロイツを作っていた時にも、それが顕著にあらわれてたし」
リインが言ったように、射撃魔法や砲撃魔法で素早く動く目標を撃ち落とすには、高度かつ精密な照準が必要である。なのはの場合は、レイジングハートの援助を受けながら次第に撃ち慣れていった形で強力な砲撃魔法が出来上がったが、はやての場合は状況が違う。
はやてはなのは以上に、そのリンカーコア内に膨大な魔力を保有している。規模の大きな魔力を細かくコントロールすることは容易ではない。事実、なのはの言う通り、シュベルトクロイツを開発していた時は、魔力をデバイスに送り込む際のコントロールが上手くいかずにデバイスを破壊させてしまったこともあった。それも一度や二度ではないのである。
「なのはさんは砲撃魔法に関してはピカイチだって聞きました!ご指導、お願いできませんですか!?」
「……ちなみに、誰に聞いたの?それ」
「ヴィータちゃんです!『あいつに砲撃の隙を与えてみろ、即座に白い悪魔が出てくるぞ』って言ってました!」
「……………………そう」
次の模擬戦でどんな風に攻めようか考えておこう、となのはは密かに思った。
「まぁ、うん。私とレイジングハートでよければ、リインに協力するよ!」
「わぁい!ありがとうございます、なのはさん!」
なのはの返事を聞いた途端、体中で喜びを表現するように宙でくるくると回るリイン。
なのははそれを見て、「子供がいたらこんな感じなのかな」と微笑ましく思った。
「多重処理能力のコツ?」
「せや」
同時刻。
友人に迫る、リインの主の姿があった。
「どうして、私に?」
「フェイトちゃん、接近戦も出来るのに遠隔操作系の魔法も十分扱えるやろ?せやから、結構それ得意なんかなと思ってな」
フェイトに話しかけているのは、他ならぬはやて。
フェイトは、接近戦においてシグナムといい勝負を繰り広げるが、急な遠距離戦にも、臨機応変に素早く行動を切り替えることができる。それは、接近戦の最中から、遠隔操作系の攻撃魔法の術式を組み上げることができているからではないか、はやてはそう考えたのだ。
よく見てるなぁ、とフェイトは内心で感心する。
「照準合わせとか、大体のサポートはリインがしてくれるとは思うんやけど、頼りっぱなしじゃアカンやろ?いざっていう時もあるかもしれへんしな」
「なるほどね…シュベルトクロイツにそういったフォローはできないしね」
「そうなんよ。だから、多重処理能力は十分に使えるようにしておきたいんや」
―――はやてが私に頼んでいることは、リインが頼りないから言っているわけではない。
―――リインを信頼しているからこそ、任せっぱなしにならないようにって考えて言っているんだ。
信頼する相手がすぐ近くにいるわけでもないのに、こんなにもはっきりとした絆が見えることに、フェイトは脳裏でアルフを思い描くとともに、微笑みながらこう答えた。
「私でよければ、付き合うよ」
「ほんまか!?おおきになぁ、フェイトちゃん!」
なのはもフェイトも、夜天の王が管制人格を従えて模擬戦を挑んでくる日が待ち遠しくなった。
多種多様な魔法の持ち主にどう応戦するか。
期待に胸を膨らませながら、日々模擬戦に励む。
夜天の王が復活する日は、もうすぐである。