久々に訪れた校舎は、あの頃と何ら変わり無かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  アルバム逆上がり
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「あっ!あったでー」
 
 
5人並んで小学校校舎の廊下を歩いていると、声を上げたはやてが真っ先に駆け出した。
 
 
「ちょっと!廊かは走っちゃダメじゃないのー!?あんたもう中学卒業するんでしょ!」
「まぁまぁアリサちゃん。今日は大目に見てあげよう、ね?」
「そうだよ、もう卒業しちゃうんだから」
「…まぁ、それもそうね」
 
 
なのは達は、はやて率いる八神家が中学を卒業してミッドチルダに移住するという話を聞いて、卒業前に小学校の校舎を訪れていた。
先生には既に挨拶を済ませてあるので、あとは校舎を見て回ったりするだけだ。
 
 
「ほらここ!三年A組の教室や!」
「本っ当に元気ねぇアンタ」
「わあ!懐かしいね」
「フェイトちゃんが来たときのこと、まだ覚えてるよ!」
「えぇっ!?は、恥ずかしいなぁ…」
 
 
先陣を切ってはしゃぐはやての後に、少しあきれ顔のアリサと苦笑いのなのは、にっこりとほほ笑むすずか、顔を赤らめたフェイトが続く。
 
 
「こんなに小さな机で勉強してたんだねー…」
 
 
なのはが窓際の机の一つを撫でながら、穏やかな笑顔を浮かべる。
 
 
「こうして見ると、黒板も小さいよね。中学校のものより」
「今じゃあ黒板のてっぺんまで手が届いちゃうな、私」
 
 
フェイトとすずかが黒板を眺めながら言う。
黒板を消すのに苦労したことは、今でもいい思い出だ。
 
 
「黒板には、はやてがよく落書きしてたわね……って、はやて?どこ行ったのよー?」
 
 
アリサの一言をきっかけに、4人ははやての姿が見えないことに気付いた。
 
 
「…あ、はやてちゃんから念話きた。体育館にいるって」
「いつの間に移動したの!?」
 
 
はやての音も無い行動に、フェイトが驚く。
4人はとりあえず、体育館に移動することにした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「おっ、みんな来た来たー」
「でもどうして、体育館に…?」
「いやな、ちょっと体動かそ思うてな」
 
 
体育館に行くと、念話の内容通り、はやてがいた。
その手には、ダムダムと一定のリズムで音を立てる、バスケットボールが1つ。
 
 
「バスケね…いいわ。やろうじゃない!」
「お、乗り気だね。アリサ」
「最近ジュケンで勉強ばっかりだったもの!ここらでパーッとストレス発散したいじゃない!」
「それには私も賛成かな。バスケなんて何か月ぶりかな」
 
 
アリサがニッと笑ってはやてのボールを奪おうと駆け出す。フェイトとすずかがその後を追い、なのはが最後に走り出した。
 
 
「今日は顔面にボールぶつけないようになー、なのはちゃん!」
「もうっ!人が一番気にしてることをっ」
「この間の体育でのバレーボールのも痛そうだったしね」
「フェイトちゃんまでー!」
 
 
3on3ができる人数でもないので、5人はルールも特に設けずバスケを始める。
はやてのボールをさっさと奪ったアリサが逃げようとしたが、フェイトに遮られ、すずかが2人の間に割り込んで最終的にボールを取った。
放課後の夕日がさした、静まりかえった体育館には、5人の会話と笑い声と、ボールが床を叩き鳴らす音だけが響いていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
バスケが一段落したところで、5人はグラウンドに移動していた。
あの頃は上るのにも苦労した鉄棒だったが、今となってはそれも容易なことだった。
ただし、回ることは厳しいから、逆にできなくなくなったことも多いのだが。
 
 
 
「ねぇ!」
「どうしたの、なのは?」
 
 
 
沈んでいく夕陽を見ながら、なのはが声を張り上げた。
それを聞いて、4人がなのはへと目を向ける。
さっきの教室でも、体育館でも、このグラウンドでも、たくさんの思い出があった。
フェイトとすずかは毎年運動会のヒーローだった。
テスト期間になればアリサはなのは達の家庭教師だった。
はやては走れるようになってからすごく嬉しそうで、幸せそうだった。
 
 
 
なのはは思った。
 
 
一生忘れない。今日この4人と一緒にさかのぼった、思い出の詰まった校舎(アルバム)を。
 
 
 
  「また5人で、ここに来ようね!」